「文字がびっしり詰まっている」
「難しい言葉が多くて読み解くのが大変」
行政機関の資料に、そんな印象を持つ方は少なくありません。
今回ご紹介するのは、そのイメージを覆した九州経済産業局様の事例です。全2回・計6時間の資料作成研修(シリョサクメソッド言語化編・スライド化編)を導入した結果、うねり史上最高の受講者満足度を記録。研修直後から実務資料にメソッドが活用されるなど、組織にたしかな変化が生まれました。
お話を伺ったのは、本プロジェクトを牽引された総務企画部広報・情報システム室の秦様です。
行政機関ならではの全ての情報を書き込む文化や、専門用語が多用される構造的な壁がある中で、なぜうねりのメソッドが選ばれたのか。秦様の言葉から、組織に「共通言語」が生まれるまでの軌跡をたどります。
ご依頼の目的
全ての情報を書き込むことが多かった資料作成業務を見つめ直し、AI活用を見据えた資料の構造化と意思決定の質の向上を図るため
支援内容
概要:構成力・表現力・生成AI活用を一体的に学ぶ、実践的な資料作成研修を計6時間(3時間×2回)実施
対象者:資料作成業務に携わる局員20名
カリキュラム:シリョサクメソッド(言語化編・スライド化編)
成果
受講後のアンケートにて、業務に直結する内容として高い満足度が得られた。
既存の資料をどう修正するかを考えて取り掛かっていた資料作成の「あるべき手順」がロジカルに言語化され、聴き手目線で考える重要性が浸透した。
研修直後に受講者が作成した委託調査報告書の概要資料でさっそくメソッドが活用されるなど、わかりやすい構造の資料が作られるようになった。
資料作成の「共通言語」と、AIの出力を評価・修正するための「人間の判断軸」が組織内に生まれ、レビューやコミュニケーションそのものが効率化される土台が構築された。
尾藤 まずは、今回「資料作成研修」を導入しようと考えた背景や、当時の課題感について教えてください。
秦 私たちのような行政機関では、議論の結果を資料に落とし込み、その資料をもとに様々な階層・会議体で意思決定が行われる傾向にあるため、必ずしも資料の作成者がその資料を説明する訳ではありません。つまり、誰もが内容を理解できる資料を作成する必要があります。
しかし、局内には資料作成のルールや体系的な研修がなく、「わかりやすい資料」や「綺麗な資料」の定義が人それぞれ異なっていました。
尾藤 担当者の口頭説明がない状態で資料が組織内を巡り、作成者のもとから離れた場で意思決定が行われるからこそ、誰が見ても伝わる状態にする必要がありますよね。そうなると、明確な基準がないと資料のレビューも難しそうですね。
秦 はい。レビューする側にも形式知としての共通言語がありませんでした。そのため、中身の構成に対する指摘なのか、デザインへの指摘なのかが作成者に伝わりにくく、フィードバックがうまく機能せずに、修正を重ねるうちに方向性がズレてしまうことも珍しくありません。
そういった状態から脱却するために、組織の基準となる「共通言語化できるメソッド」を探していました。
中村 そもそも、弊社を知っていただいたきっかけは何だったのでしょうか?
秦 数年前、各地方の経済産業局を含む経済産業省内の取り組みをプレゼンするコンペに、私どもも参加することになり、資料作成のコツを調べていた時に、たまたまYouTubeで「しごおもTV」(旧シリョサクTV)にたどり着いたことがきっかけです。
ひとつひとつの言葉がすごく刺さったことを覚えています。横文字を使った表層的なフレームワークではなく、「中身が大事」という本質的なメッセージに、「そうですよね」と納得感しかありませんでした。そして、動画を参考に資料を作った結果、コンペで表彰され、小さな成功体験を得ることができました。
尾藤 今回、実際に研修として導入いただいた決め手は何だったのでしょうか?
秦 横文字が少なく、平易な言葉で本質をついたしごおもTVの発信内容に、私自身が感銘を受けたのと同じように、当局の文化にもマッチすると思ったからです。
また、ただ講義を聞くのではなく、「手を動かしてワークできる」という実践的な内容であることが第一条件でした。操作やデザインのテクニックに限らず、目的設定や構成立ての思考フレームを学べる点が、まさに私たちが求めていたものと合致していたというわけです。
尾藤 研修の設計段階では、内容についてとても密にすり合わせをさせていただきました。振り返ってみていかがでしたか?
秦 まずありがたかったのは、行政機関特有の文化を深く理解し、寄り添ってくださった点です。
私たちの資料には、「わかりやすさ」以前に、一次情報を扱う機関として「正しく記さなければならない」という絶対的な前提があります。過去に作成したものを前提に資料を作成する構造や、難しい言葉を使わざるを得ないといった行政特有の事情を汲み取った上で、制約や事情に囚われずに使える思考フレームに調整していただけたのは非常に心強かったです。
尾藤 後半のスライド化編では、PowerPointの時短テクニックを学ぶ案もありましたが、前半の研修で触れた言語化のメソッドをしっかり定着させる案をお選びいただきました。そこにはどんな思いがあったのでしょうか?
秦 早く作り上げることよりも、まずは「良い設計図」を作れるようになることを優先したかったのです。これから生成AIの活用が進むと、「AIが作ったからこれでいいだろう」と、自分の頭で考えて立ち止まるという過程を飛ばしてしまう危険性があるのではないかと考えております。
尾藤 便利になる一方で、AIの出力をそのまま鵜呑みにしてしまうリスクですね。
秦 だからこそ、AIが生成したものを「本当に伝わる内容になっているか」と正しく評価し、修正するための「人間の判断軸」を育てる必要があると思っています。小手先のテクニックを学ぶのではなく、組織として共通の判断軸を持つことがこれからの時代には不可欠だと考え、本質的思考の定着にこだわりました。
尾藤 研修後のアンケートでは、非常に高い評価をいただきましたね。
中村 自信を持って提供できる研修内容であることはたしかですが、講師としてご提供した中で過去最高の数字だったので、とても驚きました。局内での反応はいかがでしたか?
秦 これまで感覚でおこなっていた資料作成がロジックとして言語化され、相手目線で考える重要性にあらためて気づけたという声が多かったですね。
尾藤 それは嬉しいですね!実務の場での変化は感じられましたか?
秦 さっそく目に見えた変化がありました。受講した局員が研修直後に委託調査報告書の概要資料を作成したのですが、研修で扱われたメソッドの型をしっかり使ってくれていたんです。
これまでは、文章がロジカルに書かれていても、パッと見で構造がわかりにくいことがありました。しかし、今回はメソッドを活用してくれたおかげで、一目で伝えたいことがわかる、読みやすい資料へと変わっています。組織内に「良い設計図とは」の認識が広がったことで、これからは資料のレビューやコミュニケーションそのものも、ぐっとスムーズになりそうだと期待しています。
尾藤 研修を経て、一つの基盤ができた状態かと思います。今後は局内にどんな文化や変化をつくりたいですか?
秦 これからは、単に体裁を整えるのではなく、「キーメッセージ(その資料で伝えたい主張)は何か」をしっかりと追求しあうような文化を醸成していきたいですね。
行政機関では補助金の公募や法律の説明など、どうしても難しい言葉を使わざるを得ない場面が多いです。しかし、言語化のステップを踏むことで、自分たちが何を一番伝えたいかを理解して作ることで、進むべき道が見え、本質的なコミュニケーションができるようになると思っています。
尾藤 組織の文化が変わっていくのが楽しみですね。
秦 私たちのような「一次情報を扱う組織」だからこそ、表層的なデザインではなく、正確かつわかりやすく伝わることにこだわった資料作成を追求していくべきだと考えています。
局内でも「これまで資料作成の体系的な研修ってなかったね」という声が上がりましたが、他の機関でも同じような課題があるのかもしれません。資料作成は、これまで立ち止まって見直す機会が少なかった業務ですが、仕事全体のコミュニケーションを効率化する上でも、決してないがしろにはできませんので、資料作成研修は非常に価値があるものだと考えています。
(撮影/阿久津勇太郎 取材・文・編集/尾藤択郎)
うねりは、企業活動における言語化・アウトプットを支援するクリエイティブカンパニーです。
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